大学卒業後、新卒として専門商社に入社しました。
「海外とつながりを持てる」というシンプルな理由で商社を志望しましたが、就職活動時点で業界研究をしておけばよかったと後悔しています。
そもそも専門商社と総合商社の違いとは?
商社を志望している方で、「専門商社」と「総合商社」のどっちを受けるべきか悩まれている方も多いのではないでしょうか。
表面的にはなんとなく分かるものの、やはり実際に働かないと具体的な「違い」はわかりません。
そこで、専門商社で働いていた立場から、両者の違いについて解説します。
また、最後には、パターン別で「専門商社・総合商社」どっちを選ぶべきかを考察しました。
本記事のポイント
・専門商社と総合商社の違いを解説
・専門商社と総合商社の強みと弱みとは?
・就職や転職をするならどっちを選ぶべき?
この記事のRecord
専門商社と総合商社の違いとは?
それでは、さっそく「専門商社」と「総合商社」の違いについて解説します。
総合商社で働いていた経験はありませんが、「某I社」や「某MA社」と取引をしていたことや、「MI社」で働いている友人からの情報をまとめました。
主な違いは3つ
専門商社と総合商社の違いは、「会社の規模・形態」、「事業内容」、「給料」の3つです。
細かいことを含めるとまだまだ違いはありますが、この3つの違いを把握しておけば問題ありません。
①:会社の規模・形態
1つ目の違いは、「会社の規模・形態」です。
専門商社
専門商社に関しては、90%以上が中小企業で、大企業と呼ばれる専門商社はそこまで多くありません。
また、「メーカー系」、「総合商社系」、「独立系専門商社」の3つに分類され、企業が子会社として専門商社を保有しているケースも多いです。
・メーカー系専門商社
株主やバックにメーカー企業の存在がある。製品を作るための材料を卸したり、メーカーが販売する製品を売ったりすることが目的。
・総合商社系専門商社
総合商社の子会社。特定の事業領域を補完する形として、総合商社のビジネスをサポートする存在。基本的には、総合商社が獲得した案件を子会社が担当する。
・独立的専門商社
バックに他企業が存在しない独自の専門商社。歴史も長く、大手企業が多い。独自の販売ルートや、取引先を多数保有しており、専門商社のなかでも大きな事業を扱っている。
ちなみに、わたしが勤めていた専門商社は、大手メーカーの子会社です。親会社が関連する事業が、売上の4割ほどを占めていました。
安定しているというメリットがある一方、親会社に逆らえないのが経営的な悩みです。
総合商社
一方で、総合商社は、すべてが大手企業です。一般的に、「5大商社(7大商社)」と呼ばれ、三菱商事・住友商事・三井物産・伊藤忠商事・丸紅、(豊田通商・双日)が総合商社です。
また、専門商社の形態でも解説したとおり、それぞれの会社が子会社を保有しています。
三菱商事に至っては、1,000社以上の子会社があり、三菱商事マシナリ、三菱商事エネルギーなどは「総合商社系専門商社」に属します。
つまり、総合商社がトップオブトップの立ち位置にいて、事業を子会社に振り分けたり、専門商社を設けて仕事を共同で行ったりするのが特徴です。
②:事業内容
専門商社と総合商社は、企業の形態から分かるとおり、事業内容にも大きな違いがあります。
専門商社
専門商社は、特定分野のみを扱うケースがほとんどです。
たとえば、わたしがいた会社は、「機械系の専門商社」であったため、国内メーカーが製品生産に必要案産業機械、その部品などを海外から輸入し、卸していました。
ほかにも、食品・化学品・エネルギー・半導体など、事業領域が限られているのが専門商社の特徴です。
総合商社
一方で、総合商社の事業は、「カップラーメンからロケットまで」と言われるように、ビジネスに限界がありません。
また、商社と聞くと「貿易」をイメージしやすいのですが、近年、総合商社のビジネスに変化が生まれています。
貿易だけでなく、「投資・企業経営(子会社化して経営)・資源開発」など将来的な利益獲得につながる事業が大半を占めるようになりました。
専門商社と比較すると膨大な資金を持っていることから、企業買収や海外企業への投資を行い、事業の幅を広げるのが総合商社のビジネスの特徴です。
③:年収
3つ目は、誰もが気になる「年収」です。
商社といえども、専門商社と総合商社では、年収面にも違いがあります。
専門商社
専門商社の年収は、はっきり言って「ピンキリ」です。
年収300~400万円の会社もあれば、年収1,000万円を超える会社まで。
ここで、チェックしておきたいのが、「独立系専門商社」の年収は高めであることです。
というのも、メーカーや総合商社系専門商社は、親企業よりも高額な年収を狙いにくいためです。
親会社が年収700万であるのに対し、子会社専門商社の年収が1,000万円を超えていたら、組織的な摩擦が起きますね。
総合商社
総合商社は、国内企業のなかでもトップレベルの年収を得られます。
30代で年収1,000万円を超えるのは当たり前で、海外駐在や役職が付くと1,500万円ぐらいにもなるそうです。
優秀な人材を採用しないとまずいので、それなりに年収も高く設定されています。
専門商社と総合商社の比較表
専門商社 | 総合商社 | |
①:会社の規模・形態 | 中小規模の会社が多い。「メーカー系」、「総合商社系」、「独立系商社」の3つに分類される。 | 大企業のみ(三菱商事、伊藤忠商事、住友商事を含む5大商社)。トップオブトップの位置にあり、子会社に専門商社を持っている。 |
②:事業内容 | 特定の製品に関する「貿易事業」がメイン。海外企業から製品を輸入し、国内で卸すのがビジネスモデル。 | 貿易だけでなく、「投資・企業経営・資源開発」など将来的な利益につながる事業が多い。資金も膨大にあるため、規模の大きいビジネスを進めやすい。 |
③:年収 | 会社によってピンキリ。年収300~1,000万円まで幅広く、事業内容や規模に応じて異なる。高年収を目指すなら「独立系専門商社」がおすすめ。 | 基本的にどこも年収1,000万円は軽く超える。海外駐在・役職が付くと、さらなる年収アップ。 |
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入社後に感じる専門商社と総合商社の「強み・弱み」
専門商社と総合商社の違いについて、おおまかに説明しました。
次に、「入社後に感じる」専門商社と総合商社の強みと弱みを解説します。
面接の志望動機や、入社後にやりたいことなどのネタ材料としても活用できると思うので、参考にしてみてください。
専門商社の強みと弱み
強み
・専門性の高い分野で人脈を構築できる
・特定分野への業界に属する顧客に名前が通る
専門商社の強みは、特定分野に精通した人材に成長できることです。
業界の動きや知識が増え続けるため、どのようなニーズがあるのかを先読みできるようになります。
輸入先企業・顧客先両方に対して、個人の名前が広がることで、人脈を拡大しながら有利にビジネスを進めることも可能です。
弱み
・業界によっては自由度が低い
・ビジネスの幅を広げにくい
専門商社の弱みは、ビジネスを広げにくいことです。
業界の市場規模が狭いと、必然的に事業領域も限定されてしまいます。
また、専門性が高いがゆえに、業界の枠を超えてビジネスを拡大するという自由度も低いです。
わたしは、紙業界を相手に輸入業務を担当していましたが、紙自体が必要とされなくなった現代、売上も年々下がりました。
専門商社は、ビジネスを転換しにくいといった点に注意する必要があります。
≫専門商社のメリット・デメリットに関しては、こちらも参考にどうぞ
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総合商社の強みと弱み
強み
・規模の大きい案件に関われる
・信頼性を活かして仕事を行える
総合商社の強みは、専門商社と比較して規模の大きい案件に関われることです。
たとえば、新しいエネルギー開発、資源発掘のために炭鉱を開発、宇宙に関わるビジネスなど、想像を遙かに超えるビジネスに携われます。
貿易(トレーディング)が中心の専門商社と異なり、業界を根本的に動かすようなビジネスも行っており、数百億、数千億といった金額の案件も多いです。
また、総合商社は日本国内だけでなく、世界的にも知られているため、知名度を活かしながらビジネスを広げられます。
弱み
・ビジネスに失敗すると巨額な損失
・世界中への人事異動
一方で、業界の衰退や悪いニュースが流れることで、巨額な損失を被ることもあります。
最近では、原油価格の下落で、大手総合商社が数千億の減損したケースもありました。
商社は、足で稼ぐ仕事です。
国内はもちろん、世界がビジネスフィールドであるため、人事異動や長期出張も珍しくありません。
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就職・転職するなら「専門商社」と「総合商社」どっち?
最後に、就職や転職するなら、専門商社と総合商社のどっちを選ぶべきか、パターンごとに解説します。
もちろん、わたし個人的な意見なので、あくまでも参考程度に捉えてください。
①:新卒・中途で難易度が異なる
商社への就職は、「新卒」であるか、「中途(転職)」であるかで難易度が大きく変わります。
まず、新卒であれば、専門商社・総合商社どちらも狙えます。
専門商社は、会社によって数人~数百人まで募集しているため、乱れ打ちすればどこかに採用されるはずです。
総合商社も毎年100人前後(総合職)を募集しており、難易度高めですが、可能性は0ではありません。
総合商社への転職は難しい
一方、中途(転職)の場合、総合商社の募集はほぼありません。
日本固有の文化で大手企業ほど転職人材の募集をしていないため、枠が必然的に狭くなります。
なお、専門商社であれば、会社数も多いため、定期的に中途人材の募集を行っています。
新卒→専門商社・総合商社両方狙える
転職→総合商社就職は枠が少ないため、非常に難しい。専門商社は一定の転職枠があります。
②:前職とつながりがある方を選ぶ
次に、前職とのつながりがある方を選ぶことも大事です。
例えば、鉄鋼メーカーで働いている場合、総合商社を狙うより、鉄鋼関係の専門商社の方が圧倒的に採用されやすいです。
当然ですが、業界を把握していることや、人脈を活かせるため、専門商社側にとってもメリットがあります。
③:転勤をしたくないなら中小専門商社
3つ目は、転勤です。
就職する上で、転勤が気になる方も多いと思います。
転勤をしたくないのであれば、中小専門商社がおすすめです。
東京・大阪・名古屋などエリアが狭いため、人事異動に該当するリスクが少ないほか、勤務場所の希望が通りやすいですね。
総合商社は、日本だけでなく、世界が異動先となるため、転勤が嫌いな方は合わないと思います。
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まとめ:専門商社と総合商社の違いを把握してから就活しよう
専門商社と総合商社の違いを把握してから、就職を行うようにしましょう。
同じ商社といえども、企業規模やビジネス、年収に大きな違いがあります。
自分の立場や、希望する方向性を確かめながら、どっちを選ぶか判断してみてください。